1961年生まれ。WAVEなどレコードショップ勤務が音楽の世界デビュー。
avex内のCutting Edge レーベルを経て現在、東洋化成にてアナログレコードの営業マン。Record Store Day、レコードの日などイベントも担当。
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“ここ”でしか聞けない“あんな話”や“こんな話”をお届けするぽにレコの目玉企画「ここばな(ここだけの思い出ばなし)」。
前回に引き続き、東洋化成の本根誠氏とポニーキャニオンの伊達尚氏による対談の後編をお届け!レコードマニアのおふたりが私物のレコードを持ち寄り、お気に入りのレコードを紹介してくれました。お互いのラインナップを見ながら、レコード談義が止まらない!!自宅で使用している機材の紹介もしてくれているので、ラストまでお楽しみください♪
取材者Profile
本根 誠 Honne Makoto
東洋化成株式会社
本根 誠 Honne Makoto
東洋化成株式会社
1961年生まれ。WAVEなどレコードショップ勤務が音楽の世界デビュー。
avex内のCutting Edge レーベルを経て現在、東洋化成にてアナログレコードの営業マン。Record Store Day、レコードの日などイベントも担当。
伊達 尚 Date Takashi
株式会社ポニーキャニオン
伊達 尚 Date Takashi
株式会社ポニーキャニオン
1965年生まれ。営業~新人発掘~制作を経て、現在はプロダクト管理部在籍。
レコードを買ったり、売ったり、作ったり続けて半世紀近く経ちました!本根さんが制作されたECDの”DIRECT DRIVE”「やりきれない事ばっかりだからレコードを聴いている 今日も」がマイ・アンセム。
Honne’s セレクション♪
① ザ・ローリング・ストーンズ「ラヴ・ユー・ライヴ」
② ビリー・アイリッシュ「LIVE AT THIRD MAN RECORDS(RSD限定商品)
③ ビル・エヴァンス「ワルツ・フォー・デビイ」
映像がない時代のライヴ盤は最高っ!!
本根:この3枚はライヴ盤の推し作品。DVDとかBlu-rayが登場する前って、俺らはライヴ盤を聴いていたわけじゃないですか。映像を観るまで、マディソン・スクエア・ガーデンがあんなにデカイと思っていなかったですよね!? でも、映像がない時代のライヴ盤って最高だよね。これはレコードでしかできないことですから。
伊達:ザ・ローリング・ストーンズ「ラヴ・ユー・ライヴ」は、ロックの王道として絶対に通るレコードですよね。僕も中学1年生のときに友達の家に行ったらこれがあって。その友達の高校生の兄貴に爆音で聴かせてもらいました(笑)。ちょっとワルな雰囲気、そこがカッコいいと思わされた世代です(笑)。
① マトゥンビ「ポイント・オブ・ビュー」
② ジョイ・ディヴィジョン「クローサー」
③ リントン・クウェシ・ジョンソン「イン・ダブ」
同じレコードでもアメリカ盤が熱いっ!!
本根:この3枚はすべてイギリスのアーティストなんですけど、俺が買っていたのは全部アメリカ盤。同じレコードでもイギリス盤とアメリカ盤が出ていて、値段ももちろん違ったんだけど、俺は値段ではなくアメリカ盤の音が好きだったんだよね。アメリカ盤の方がぞんざいっていうか、分厚いっていうか。ラフな感じでラウドなんだよね。逆にイギリス盤の方が繊細で硬い。
伊達:そうそう、わかりやすい説明ですね!高音も低音も中域も全部ガツンと出てくるっていうのがアメリカ盤の音の傾向ですよね。
本根:当時、Ciscoとか輸入盤専門店に行くとイギリス盤とアメリカ盤が普通に並んでいたじゃない。俺はなるべくアメリカ盤を買っていたね。
① ワイルド・バンチ「Friends And Countrymen(12インチシングル)」
② ザ・スタイル・カウンシル「ロジャース(12インチシングル)」
③ ジェームス・テイラー「ウォーキング・マン」
④ ザ・スペシャルズ「ザ・スペシャルズ」
レコードのジャケは俺のファッション誌!!
本根:これは、20代の俺のファッションのルーツ。いわゆるレコードのジャケットじゃないとファッションはチェックできないみたいな。カーディガンなのにボタンを外しているとか、ここにネックレスしているとかさ。ファッションは全部ジャケットから学んでいるんだよね。世代的にディスコに行くじゃないですか。だけど、ジェームス・テイラーが好きだったからセーターを着てディスコに行っていたんですよ。みんなギラギラのディスコファッションだったけど、俺だけセーター。今考えるとヘン(笑)こういうのがカッコいいと思って生きていたから、どこへ行くにもこういう格好をしていて。さらにその前だと、あがた森魚のマネをして下駄を履いたりとかね。
伊達:なるほどな〜。
① ザ・ローリング・ストーンズ「STONED MSG(ブート)」※手作りジャケ
② ザ・レジデンツ「エスキモー」
③ オレンジ・ジュース「YOU CAN'T HIDE YOUR LOVE FOREVER」
④ トーキング・ヘッズ「フィア・オブ・ミュージック」
⑤ イエロー・マジック・オーケストラ「イエロー・マジック・オーケストラ(US盤)」
海賊盤の自作ジャケは当たり前!?
本根:ここからはレコードの収納性についてなんですけれども、雑誌の切り抜きを全部中に入れているんですよ。雑誌をビリッて破いて置いておくと捨てちゃうじゃないですか。だけど本棚に入れても絶対に見なくなるから、レコードの中に入れていたんだよね。
伊達:僕もやっていました!ライヴを観に行った後のチケットの半券とかも入れたりして。
本根:やっぱりやっているんだよね!いわゆるレコード棚であり、書棚でもあるというか、レコードに全部、情報が入っている。今だったらWikipediaみたいな、スマホでこと足りることを全部自分でやるしかなかった世代だからね。だからレコードが全部の情報ネタの収納場所でもあったんですよね。
伊達:CDだと入れるスペースがほとんどないですもんね。
本根:「エスキモー」は西荻窪のぎゃばんっていう喫茶店にあったレコード屋さんで買ったんですね。そしたら、ライナー付けておきますって言ってお店の工藤(康晴)さんが手書きのライナーを頼んでもいないのに、ザ・レジデンツのこのレコードに付けてくれたんですよ。
伊達:この当時って、レコードレンタル全盛期の時代だと思うんですよ。レンタル屋さんでコピーするっていうのは結構当たり前でしたよね。
本根:アメリカ盤のキッド・クレオールは、1500円くらいで買ったレコードに、レンタルレコード屋さんで同じものを借りて、ライナーノーツだけをコピーしました。レンタルレコードは100円くらいで貸りられるので、国内盤を買うより安いんですよ。
伊達:今ほど情報がないから、国内盤ライナーノーツはものすごい貴重な情報源でしたよね。でも、国内盤定価2500円とか2800円はさすがにティーンの頃はおいそれとは出せない金額でしたから。
本根:オレンジ・ジュースに関しては、もう歌詞を自分で訳しちゃっていたりね(笑)。
伊達:本根さん、そういうタイプだったんだ!
本根:自分にとって究極とも言えるのが、これこれ、ストーンズの自作ジャケ(笑)。当時って海賊盤(ブート)がいっぱいあったじゃないですか。オフィシャルの正規盤が2000円だったら海賊盤って1300円くらいで買えたんですよ。音は悪いけど、先月やったライヴレコーディングがもう今月に聴けちゃうみたいな。今のYouTube的なものですよね。アーティストも半分、黙認していたと思うんですけど。で、好きなアーティストの海賊盤とかを買って、自分でジャケを作ったって言うね(笑)。
伊達:えっ?本根さんが自分で作ったんですか?
本根:そうそう、中学生の俺がね(笑)。海賊盤って大概、白ジャケじゃないですか。よし、作ろうって!しかも60歳になっても大体、同じようなことをやっているっていうのが最後のオチで(笑)。音が云々とかってみんなあるけど、目に見えてイカれているっていう。
伊達:イカれてますね~!物が作りたくてしようがなかったっていうことですよね。
本根:多分、誰かとコミュニケーションが取りたかったんだよね。
Date’s セレクション♪
マリ・ウィルソン「ショウ・ピープル」
① イギリス盤
② アメリカ盤
③ 日本盤
同じ作品でも同じじゃないっ!!
伊達:本根さんのコンセプトでセレクトするっていうのは、ボクも共通しています。マリ・ウィルソンなんですが、なんで3枚も持っているかっていうと(笑)。イギリス盤、アメリカ盤、日本盤とそれぞれが違うんですよ。まずはジャケ。オリジナルの本国イギリス盤にはロゴがないですよね。ところがアメリカ盤、日本盤にはロゴとアーティスト名がはいっている。たぶんアーティスト認知が低いこともあってアメリカのレコード会社判断でリデザインされたんでしょう。さらに、実は収録楽曲が全く違うんですよ。
本根:やっぱり違うんだ!
伊達:それぞれ曲順も違うし、アメリカ盤は10曲入りなんだけど、日本盤、イギリス盤は12曲なんです。
本根:なるほどね。
伊達:で、同じ12曲入りでも日本盤とイギリス盤では曲順がまったく違うんです。要は何が違うかっていうと、レコードのカッティングが3枚ともそれぞれ違うんですよね。本来、洋楽って本国から支給されたスタンパーを使用してプレスをすることがほとんどだったんですが、このアルバムは、たぶんそれぞれの国で独自にカッティングがされたようなんです。カッティング・エンジニアが違うんで、当然音も違うんですよ。10曲入りと12曲入りでは溝の幅も違うし。中のインサートもレーベルもデザインが違うんです。細部を比較する楽しみもあってか、気がついたら3枚持っていました(笑)。
本根:素晴らしいね!
伊達:どちらかというとボクはコレクターというより、こういう違いを楽しむ、確認マニアというか。
本根:マリ・ウィルソンを3枚持っているっていうだけで、遊びに行きたくなるね!
ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ
「ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ」
① 2018年50周年記念EU TAPETE盤再発LP+CD+7インチシングル 妄想帯付き
② 1993年レキシントン再発日本盤
③ 1968年A&Mオリジナル・モノラルPROMO盤
※ちなみに国内初CD化は87年キャニオンレコード!
時代を経て愛され続ける名曲♪
伊達:ロジャー・ニコルズの3枚は…。
本根:それも3枚あるの?伊達さん、相当、孤独な青春だったでしょ?
伊達:そうですね(笑)。でもね、ボク自身も音楽を演っていたんで音楽仲間がいましたよ!共有できる友達はいたので、寂しくはなかったですね。この「ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ」を知ったきっかけは、80年代中頃に渋谷のファイヤー通りにあったハイファイ・レコード・ストアというレコード屋さんで、オリジナル・ラブの田島貴男氏とヒックスヴィルの木暮晋也氏がアルバイトをしていて、このふたりの友達から「ヤバいレコード見つけた!」と聴かせてもらったのが最初ですね。オリジナルは68年のPROMOオンリー・モノラル盤、93年にSuburbia Suiteなどで再評価されてリイシューされた日本盤、最近また若い世代から再評価されて2018年にドイツのレーベルから再発盤が出て、ディスク・ユニオンさんが特典で妄想帯を作られたんですよ。
本根:なるほどね〜!
伊達:今の時代に合わせた形でLPにCDと7インチシングルが付属されている。お客さんのニーズに合わせた形でパッケージ形態を変えていっているんですよね。
本根:でも、どの世代でもロジャー・ニコルズはアナログで聴きたくなる音楽だよね。
伊達:そうですね。
本根:だから、時代を経て再プレスを重ねているってことだもんね。
リスニング・スペース紹介(ターンテーブル、カートリッジ、スピーカー)
Honne’s ホーム♪
Date’s ホーム♪